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『すーちゃんとねこ』 刊行50周年

『すーちゃんとねこ』 刊行50周年
1973年に刊行された『すーちゃんとねこ』は2023年6月で50周年を迎えます。
佐野洋子が文章と絵の両方を手掛けた初めての創作絵本です。
当時のこぐま社の絵本は、リトグラフの技法により色の指定をして版を重ねるという印刷方法で作られていました。
『すーちゃんとねこ』は1見開きに5枚ずつ色の指定の版があります。


1973年の初版時に絵本に挟み込まれていた「作者のことば」をご紹介します。


いじわる  -『すーちゃんとねこ』を描き終えて-


 この本は、私の初めての創作絵本です。すーちゃんは特別に意地悪な女の子ではなくて、ごく当たり前の、そのへんの隣のすーちゃんです。小さい時、意地悪をしたからといって、横丁の意地悪婆さんに、必ずなるわけではない、安心しなさい。
 でも意地悪されっ放しという子供がいます。とても善良で、いい子で、泣き虫で、誰からもいじめられっ放しで、その子が向こうから歩いて来ただけで、仲間が、ムラムラっといじめたくなっちゃう子供です。
 ある日、突如、その泣き虫が頑張っちゃうことがあります。あっという間に、全ての関係が変化して、仲間の尊敬を一身に受け、彼女は早速他の誰か泣き虫の犠牲者に君臨することになります。
 世の中は厳しいのだ。子供は子供時代の厳しい世の中を渡って来なくてはいけません。私は自分の子供時代を思うと、二度と再び、あの残酷な日々に戻る気はいたしません。
 私が、憎ったらしい顔をしていじめたよう子ちゃんや、私のことをメッチャラクチャラに仲間外れにした隣のハンサムな研ちゃんがいなかったら、私の幼年時代はとても色褪せて見えます。
 この絵本は、私の幼年時代への執着から生まれたものかもしれません。意地悪すーちゃんと頑張りやのねこちゃんを、どうぞ仲間に入れて、かわいがってあげて下さい。




初めての海外翻訳版は2022年に韓国で出版されました。 すーちゃんとねこ 韓国版 ファン・ジンフィ 訳
Gilbut Children Publishing Co., Ltd.
2022年9月発行