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『おじさんのかさ』刊行50周年

『おじさんのかさ』
1974年に銀河社より刊行された『おじさんのかさ』は2024年7月で50周年を迎えます。
1992年に講談社より、カバーをかけた新装版が刊行されました。
小学1年生の教科書にも掲載され、長く広く親しまれています。


絵本が出来上がる前のことです。
佐野洋子はおじさんのおはなしの絵本を作りたいと出版社へ絵を見せに行きました。
佐野洋子の友人だけが知る当時のエピソードをご紹介します。


ある日私が、青山のアパートを訪ねると、彼女はタバコをくわえて、不愉快そうに自分の描いた絵をビリビリと破いていた。
「何してるの?」と聞くと、出版社の担当者に、顔を書き直せば出版してあげると言われたと言う。
「どんなふうに直せって言われたの」と聞いたら「英国紳士風だと売れないから、農協のおじさん風にしろだって」と怒っている。見ると、いい絵ばかり。私は、とにかく破らず、残りを私の買える値段で私に売ってくれと頼んだ。
「そうね」と言う人ではない。本気で頼んで、やっとその気にさせた。
その後描き直して、ベストセラーになる。
「英国紳士風おじさん」の原画は私の手許に残った。二千円だか、三千円だか忘れたが、私の払ったお金は彼女と二人で食べた青山通りのランチに消えた。

染色作家 行吉志津枝(武蔵野美術大学同級生)
『佐野洋子 あっちのヨーコ こっちの洋子』(コロナ・ブックス 平凡社 2017年 刊)より



『おじさんのかさ』 『おじさんのかさ』 上は1974年に銀河社より出版された旧版です。
下は1992年に講談社より出版されました。
銀河社版の表4は28ページの絵からおじさんと雨を抜き出したものですが、
講談社版では絵が描き直されています。

「おじさんは, げんきよく うちに かえりました。」